解決事例

2024/07/09 解決事例

弱者の戦い

弱いものが強いものと戦うという話です。

相談を聞いて、これはなんとかしなければならない、しかし裁判の勝ち目はない、交渉をするにしても力の差がありすぎる、というケースはたくさんあります。

保育園の隣に分譲マンションが建設されることになりました。知り合いから頼まれ、話しを聞きに行ったところ、保育士さんと親御さんとが建設反対のプラカードを持って現場に立っていました。交替でしているとのことです。

 

建物には必ず日陰が生じ、誰かの日当たりを妨げます。新たに建物を建てるときも同様です。

日陰はお互いさまで、裁判では、日陰が我慢の限度を超えているかどうかを問題にすることになっています(「受忍限度」)。

マンション建設の許可申請に際しては、日陰の図面(日影図)を作成して役所の確認を貰いますが、役所は、日陰になる施設の性質を考慮しません。

保育園には、午前8時頃から夕方6時頃まで、ほぼ半日、こどもがいますから、保育園が日陰になることは、誰が見ても好ましいことではありません。

 

裁判では勝てないと思われ、交渉しても相手にされないと思いました。

そこでまず、世論を味方につけることにしました。記者クラブというものがあります。資料を作成して持参し、記者クラブの記者たちに問題の説明をし、取り上げてくれるようにお願いします。通称、貴社レクと言います。

一社でも興味をもってくれれば成功ですが、現実はそう甘くはありません。幸い、テレビ局が1社だけ関心を持ってくれました。

次は、団体行動です。これは保育園児の母親と保育士さんにお願いし、大通りや、マンション建設をしようとしている相手の会社前でビラ巻きなどを行ってもらいました。これはテレビのニュースにもなりました。

さらに建設反対の署名も集め、ダンボール数箱分を市に提出しました。

最後に、園長と私とで相手の責任者と直接の交渉をしました。

通常、これだけやっても勝ち目は少ないのですが、時間はかかったものの、最終的に、相手が折れて、マンション建設は中止になりました。

戦うための好条件がそろっていたことと、マスコミの力と思います。

 

市民運動家に聞くと、負けるのはいつものことだと言います。

負けて当然、少しでも成果があれば成功と言います。

負けて当然のことをするのは合理的ではありませんが、だからといって黙って我慢するのがいいかということです。

負けて、成果もなくて、それでも戦えば、何か得られるものがあるのではないでしょうか。

 

© 斉田顕彰法律事務所