解決事例

2024/05/03 解決事例

解決は一つではない

ずいぶん昔の話です。

自転車の小学生がダンプに巻き込まれて亡くなりました。小学生は歩道を友だちの自転車の先になって進んでいましたが、道路横からアパートがせりだして、歩道幅50センチとなっているところでバランスを崩してよろけ、そこにたまたまダンプが来て巻き込まれました。

母子家庭で、母親から依頼を受けましたが、母親も私も、50センチ幅の歩道が許されるべきではないと思いました。

ダンプの会社と、役所とを被告として裁判を起こしましたが、この裁判には、全国各地の市町村の道路担当者が傍聴にきました。

地元の圧力で役所が道路を作ることになる、他方、道路の邪魔になる建物がある、収去が出来ないので、建て替えるときはセットバックするという念書をとって、道路を作ってしまうということが、全国各地で行われており、事故はその弊害が露呈したものと言えました。

 役所の人間を悪く言うつもりはありませんが、裁判で、現地で測ったら55センチあったと主張してきたときは、情けなさを感じました。

 裁判中のある日、役所の上の人が私を訪ねてきました。現地に新たに道路を作り、小学生が亡くなった場所は小公園にするので、それで手を打ってくれということでした。

 国はもちろんですが、役所と裁判をすると終わりが見えない長い長い裁判となります。

 母親と相談しました。安全な道路が出来、小さいけれど公園も出来るというのは、住民全員にとって望ましいし、亡くなった小学生も浮かばれるということで一致しました。

 そこで役所とは手を打ちました。なお、賠償はダンプの会社にしてもらいました。

 解決というのは、裁判で勝つことだけではなく、ほかにも解決の道はあります。

   考えてみる価値はあるのではと思います。

© 斉田顕彰法律事務所